2023/05/02
天気のいい日の朝には最近購入した自転車で出かけることがあります。
太陽光線を浴びながら1時間ほどサイクリング。
この日は,この場所に来ました。
ここは私が初めて自転車に乗れるようになった場所。親に見てもらいながら自転車に乗る練習をした場所。
こんなにせまい場所だっけ?
自転車の練習だけでなく,友達と野球をやったり鬼ごっこをしたりした場所。幼いころの自分にとって,この場所は「世界」の1/3くらいを占めていたのにね。
自転車の練習は怖かった。特に最初は怖かった。めちゃくちゃ怖かった。逃げたかった。
けれども親が見ていてくれた。
幼いころの自分にとって,親は「世界」の1/3くらいを占めていた。親に対する絶対的な信頼感があった。
ぼくがころんでもわらわない,うまくいかなくてもおこらない,こまったらたすけてくれる。
この信頼感があったからこそ,怖くてもチャレンジできた。そして自転車に乗れるようになった。
先々週の中1の授業では「時差」に関して説明して,問題を解きました。簡単な問題から少しずつ問題のレベルをアップしていく心づもりで授業の予定を立てていました。
一番簡単な第一問目から手が止まっている生徒がいる!
パソコンが重くなったときに やたらとクリックしまくると余計に固まるのと同じで,生徒の頭の中が混乱しているときに説明に説明を重ねると余計にわけがわからなくなる,今までの経験上,そのように思っています。
生徒の頭の中で何が起こっているのかを見ることはできません。ですからこういう場合には,問題を「分解」して「質問」をします。
「わからないところはどこ?」って聞いても聞かれた方は答えにくいです。そもそもそれが分かってりゃ苦労しないという。
「まず数直線を書いてみましょう」
「OKです。次に東経135度と東経75度の場所を数直線に書きこんでね」
「いいよ。じゃあ,こことここは何度 離れてるの?」
私はこの生徒の親ではありません。だから絶対的な信頼感なんてものはない。
私も含めて多くの人間は「失敗」をしたくない。そして「失敗」した姿を他人に晒したくはない。笑われるんじゃないか,呆れられるんじゃないか,怒られるんじゃないか。そう思うと自分の思った答えを言ったり見せたりすることを躊躇う。さっさと「正解」を教えてくれんかなぁという感じになる。
けれども相手に対する信頼感があれば言える。間違っても大丈夫,安全なのだということが確認できれば自分の考え・答えを見せられるのでは?と考えています。それは自転車に乗るための練習をしたときの私と同じです。絶対に大丈夫だという信頼感があるからチャレンジできる,失敗は怖いし恥ずかしいけれどやってみようという気になれる。
「間違っても大丈夫」ということを言葉だけでなくて表情やしぐさなど全身で相手に伝える。それでもダメならまた別の方法を考える。
身体だけじゃなくて心も大切。「呆れぬ!怒らぬ!馬鹿にせぬ!」(南斗鳳凰拳伝承者)という心構え。
「60度であってますよ。OKです。ところでどうやって考えました?」
「はい,正解です。次はね・・・」
「ああ,残念,ちょっと違うねぇ。ノートのここの部分を見てみようよ,こう書いてるじゃんね,ということは・・・」
「OK。それでいいです。ところで私は今 全然”教え”ませんでしたよね。全部 自分で答えたよね。もうほとんどわかってます,できてますよ」
最初は私の質問になかなか答えてくれなかった,頭の中を見せてくれなかったのですが,途中からためらいがちにではありますが答えてくれるようになりました。だんだんと調子が出てきました。
結局,この生徒はこの日の最後の問題(つまり一番ややこしい問題)を自力で解くことができるようになりました。
自力で問題が解けるようになったことがうれしい。
恥ずかしがらずに私を警戒せずに自分の考えを言ってくれたことがうれしい。
失敗を恐れずにチャレンジしてくれたことがうれしい。
そしてこの姿勢は絶対に今後に生きる。
難しいテストになればなるほど,やったことのない問題に出くわす回数が増える。
そんなときに,とりあえずやってみる。あせったりフリーズしたりしても天から答えそのものや答えのヒントは降ってこない。
図や絵を描く,数字を変えて試す,方程式や数式を作ってみる,パターンを見つける,パターンを拡張する,以前やったものに似たものはないか考える,リストを作ってみる,逆からやってみる,などなど。もしも答えにたどり着けなかったとしても失敗を恐れずにチャレンジしてみる。
こういうことができるようになればテスト本番に強くなれる。
こういうことができるようになるには,日々の勉強の中で,失敗を恐れずにチャレンジしてみたらできた!という経験を積み重ねていくしかないと考えています。
だからうれしい。問題が解けたこと以上にチャレンジしてくれたことがうれしい。
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