2023/04/25
少し前まで,北浜校の中2の社会の授業では,室町時代を学習していました。
歴史の研究が進んだり新しい資料が見つかったりすると,それが中学生の教科書にも反映されます。
そのため,私が習ったころとは「一揆」のイメージが違います。
室町時代は自力救済の時代。自分たちのことは自分たちの力で解決するという考え方によって人々が行動するようになったということが教科書に書いてあります。
といっても,自分の財産が奪われたり名誉が傷つけられたりしたときに,自分の力だけでそれを回復するのは難しい。
だから共通の利害を持つ者どうしのヨコのつながりが必要となります。その代表例が一揆だと教科書では説明しています。
ちなみに,一揆のもともとの意味は,「揆(き=はかりごと・方法・道)を一に(いつに)する」です。
授業の中で,テストには出ないような内容のエピソードを紹介することがあります。
興味をもってもらうため,ちょっと全体的に疲れているかな?というときに笑いをとるため。
室町時代の人間は,現代の私たちから考えたらありえないくらいにキレやすい。
「喧嘩両成敗の誕生」という本で紹介されている,一次資料からのエピソードをときどき授業で紹介します。
生徒のみんなが笑います。室町人のキレやすさ,沸点の低さに驚いて笑う。
何かをきっかけに誰かが誰かを〔バカにして〕笑う。たいていの場合はどうでもいいことがきっかけです。
笑われた⇒馬鹿にされた⇒名誉を傷つけられた⇒傷つけられた名誉を回復しないといけない!⇒刀を抜いちゃう(速すぎんか?)
しかも当事者同士で争ってそこで終わりにならない。
室町人にはヨコのつながりがあります。タテのつながりもある。みんなどこかの集団に属しています。
集団(グループ)の中の誰かが笑われて馬鹿にされたり傷つけられたりしたら,グループが黙っちゃいない。あいつを助けるんだ! 相手の集団は許せねぇ!
頼んでいた商品が期日に間に合わなかったというたったそれだけことがきっかけで,京都の町中で守護大名vs公家の戦いが始まりそうになり,将軍があわてて使者を送って全力で争いをやめさせたということもあったらしい。
授業の後で一部の生徒に言いました。
「周りの人のことをやたらと笑うと危ないよ,相手が室町人だったら大変なことになる(笑)」
半分冗談ですが,半分は本気です。
友達同士で冗談を言い合ったりじゃれ合ったりすることはよくあることですし,傍から見ていて微笑ましく感じることもあります。
ただ,一歩間違うと危ない。こっちは冗談の延長のつもりで言ったことやったことが,相手の心や名誉感情を傷つけることにつながるかもしれません。
相手は現代人ですから,いきなり刀を抜くとか仲間を集め弓矢を取りにいったん家に帰るとかそういうことはないでしょうよ。でもね,後々このことでしっぺ返しを食うことがあるかもしれません。友人関係がぎこちないものになるとか。
心の中で何を感じ,何を思い,何を考えても自由。これは他人にとやかく言われる筋合いのものではありません。言うのも自由。言論の自由というのが日本国憲法で認められていますし。
ただ,心の中で思ったことに対しては相手からの「反応」はありませんが,言ったことに対しては なにがしかの「反応」はあります。それ相応のことを口にしたら,何らかの「反応」はある。そしてその相手の「反応」は自分が予期していなかったものかもしれない。「そんなつもりで言ったんじゃないのに」みたいな感じで。
だから,心の中で思ったことをすぐに口にするのではなく,いったんは心の中に留める。そして,この内容は口にしたらシャレにならんな と思ったら口にしないでおく。
どうしても言いたくなったら,誰もいないところで「王様の耳はロバの耳!」とか言えばいい。
すぐにキレる室町人のエピソードから私は教訓を得ました。
①相手の名誉感情を傷つけるのはかなりヤバいことである(鼻で笑うとか危なすぎる)
②こちらにそのつもりはなくても,「傷つけられた」と相手が受け取る場合もある
③思いついたことをすぐに口にするな,いったんは飲み込め
という教訓を。
かなり強引な結論づけのような気もしますけれど。
現在,生徒の皆さんが使っている教科書では,紀元前3500年ごろにメソポタミア文明が生まれたということになっています。つまり,メソポタミア文明が生まれてから現在まで約5500年。一方で人の一生は長くても100年ちょっと。
その約100年で自分自身が経験することから学ぶのも大切。
自分自身の経験にプラスして,5500年の歴史(過去の人々の人生)から学べること,自分の人生に活かせることもいっぱいあるんじゃないかと思いますけどね。
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