北浜校ブログ

2024/12/05

社会の記述問題・因果の関係  大田

問題例

例題 資料(地理の教科書p264)を見て,東北地方の工業出荷額と出稼ぎ者数の変化についてわかることを書きなさい。

テストや問題集等でよく見るタイプの問題です。

「工業製品出荷額が増加⇒(出稼ぎに行かなくても地元で働く場所が増えた)⇒出稼ぎ者が減少した」ということが頭に浮かべば,あとはそれを文章にしてOK。そんなに難しくないと思います。

ところが,私の体感としては,生徒のうちの3割強ぐらいは,次のような解答を書いて不正解になります。

「出稼ぎ者が減少した⇒(出稼ぎに行っていた人が地元の工場で働くようになった)⇒工業製品出荷額が増加」と。

そもとも出稼ぎとは,賃金が低かったり仕事が少なかったりする地元から離れ,他の地域でお金を稼ぐために一定期間働くことを言います。そこから考えると後に書いた方の答えは〇がもらえません。

中2の国語の教科書に出てくる『盆土産』という作品を読んだことがありますよね。好き好んで愛する家族と一定期間離れ離れになって都会で働きたい人と思う人は少ないと思います。『盆土産』でも,父子の別れのシーン(父親が出稼ぎの職場に戻らなければならないため)で主人公が涙をこらえていたのを覚えていると思います。

地元に働く場所があって収入を得られれば,わざわざ出稼ぎに行く必要はないわけです。

まちがう理由の考察

「地元で工業が発展⇒出稼ぎ者の減少」と,すぐに結びつかないのでしょう。

たぶんそれは,”経験”がないからだと思います。

私が子どもの頃のドラマやマンガ,アニメなどに,出稼ぎの場面が出てきたのを覚えています。直接的に自分とは関係ないけれど,出稼ぎは”リアル”でした。(アニメ化された漫画『ドカベン』でも,”出稼ぎ君”というあだ名のライバルが出てきました。)

出稼ぎとは何なのかを習わなくても,どういうものなのかというイメージができていました。だから,資料を見てすぐに「地元で工業が発展⇒出稼ぎ者の減少」と頭に浮かぶわけです。そして,逆『出稼ぎ者の減少⇒地元の工業が発展』は思いつきません。

けれども現代の生徒には,出稼ぎの”リアルなイメージ”はありません。だから,最初に「出稼ぎ者の減少⇒地元で工業が発展」が頭に浮かんだ生徒はそれを書いて✖になり,最初に「地元で工業が発展⇒出稼ぎ者の減少」を思いついた生徒はそれを書いて正解になるのではないでしょうか。

どうすりゃええねん

私を含めて,人間は最初に頭に浮かんだことを答えとしがちです。すぐに答えを書きたいという衝動にかられます。

書く前にひと呼吸 置く。記述問題の答えを因果関係で書くときに,

”逆”は成り立たないのか? ”逆”の方が説得力があるのでは?などと考えてみることが必要だと思います。

上の問題とは別の問題で,因果関係を逆に書いてしまって点数を落とした特進クラスの生徒に対して,先日「書く前に”逆”を考えてみよう」というアドバイスをしました。(私の記憶が確かなら,この生徒は今までに”因果の逆”を書いて✖になったことが2度ほどあります)

さらに,テキストの問題を解いて丸付けをするときに,模範解答と自分の解答を比較して,納得がいかなかったら質問するように話をしました。

蛇足(出稼ぎの人に会った話)

出稼ぎのことを書いていたら,高校生のころに街を歩いていて知らないおじさん(出稼ぎの人)に声をかけられたことを思い出しました。

昔のことなのではっきりとは覚えていませんので,だいたいの会話の内容

知らないおじさんが道の向こうの店を指さしながら「あの店は何ですか? 飲み屋ですか?」

私「コンビニエンスストアです。ここら辺にも最近できたんですよ。」

おじさん「出稼ぎでこちらに来ていて,ここら辺の地理がわかりません。飲み屋を探しています。」

私「あっちの方にたくさんあると思いますよ」と繁華街の方を指さす。

おじさん「ありがとうございます。一緒に飲みに行きませんか?」

えっ!!!

私「あの~すいません,僕,高校生なんですけど・・・」

おじさんは,笑いながらごめんなさいと謝っていました。

笑ってすむ問題か?(笑)

そんなに老けて見えんのかって,当時16だか17だかの,いたいけな少年の心はちょっとだけ傷ついたんだぜ。

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