2023/12/28
受験する高校が実際に決まり,受験の日が近づくと,恐怖心がわいてくる人が少なからずいると思います。自分は大丈夫なのだろうかという感じで。
カス・ダマト(コンスタンティン・ダマト)という人が恐怖心に対してこのようなことを言っている。
『恐怖心は人生の一番の友人であると同時に敵でもある。ちょうど火のようなものだ』と。
火があるおかげで,私たちは暖をとることができる。生のままでは食べられないものを調理することができる。だから友人である。けれども,火をコントロールできていないと大変なことになってしまう。だから敵でもある。
恐怖心は火と同じ。恐怖心があるから人は慎重になれる。警戒心を持って慎重になれるから重大な危機に陥る可能性が少なくなる。自転車でどこかに出かける時に,もしも恐怖心や慎重さが全くなかったらどういうことになるか 想像してみたらいい。だから恐怖心は友人。けれども,恐怖心を自分で制御できなくなったらパニックになってしまう。だから恐怖心は敵でもある。
カス・ダマトは,たぶんこういうことを言いたいのでしょうね。
恐怖心を火にたとえたカス・ダマトという人はボクシングの名トレーナー。生涯で3人の世界チャンピオンを育てた。そのうちの一人がヘビー級史上最年少チャンピオンで史上最強のチャンピオンとよばれるマイク・タイソン。
カス・ダマトは,特殊なボクシングスタイル(peekabooの構え・ナンバーシステムなど)を教えること以上に恐怖心をコントロールすることを教えている。マイク・タイソンを指導するときにメンタル面を重視している。ボクシングのヘビー級チャンピオンになるような強い人間ですら恐怖心がある。だから恐怖心を持っていることは何ら恥じることではない。
他の動物と比較して人類は弱い。その弱い人類が生き残ってきたのは,恐怖心があり慎重さを持っていたからだと私は思っています。
ダマトはタイソンを暗示にかけた。「お前は絶対に世界チャンピオンになれる」「お前より強いやつなんていない」という感じで。タイソン自身にもやらせた。自己暗示をかけさせた。技術面では基礎を徹底的に反復させ厳しく指導しながら,メンタルの面をケアした。
ときには,70代のおじいさん(ダマト)が10代の少年(タイソン)を深夜に起こして暗示をかけた。(その姿を想像するとなんとも言えないものを感じますけれどね。)
ただ,気をつけなくてはいけないのは,暗示がかからない場合もあるということです。つまり,他人はごまかせても自分自身の心はごまかせないということです。
真剣に練習に取り組んでいなかった者,隠れてサボっていた者が,「自分は勝てる!」と自分に暗示をかけようとしても普通はかからない。しっかりと練習してこなかったことを他の誰でもない自分自身が一番知っているわけだから。暗示の言葉は根拠のないただのカラ元気になってしまう。
真剣に練習をしているからこそ暗示に”乗れる”。暗示に”乗る”ことで厳しい練習に耐えられる。厳しい練習をしたからさらに暗示に”乗れる”ようになる。そしてまた練習という好循環。
受験も同じではないでしょうか。テストの点数を少しでも上げるために勉強する。それも大事。そして「自分はこれだけやってきたのだ」という事実があって初めて,「自分は受かる!」という暗示に自分自身を”乗せる”ことができる。暗示に”乗る”ことができれば,テスト当日に恐怖心をコントロールしやすくなる。恐怖心を制御して慎重さに変えることができる。”敵”を”一番の友人”に変えることができる。そうすれば勝つ確率がきわめて高くなる。
だから 今 やらなければいけないのですね。
言葉には,特に自分を奮い立たせる言葉には”背景”が必要なんですよね。
”背景”=根拠 をつくるために今日も一日,頑張っていきましょう。
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